初回の今回は、筋違い角について考えてみます。「力戦振り飛車」というと普通筋違い角は入らないと思いますが、振り飛車党用で非定跡な戦法ということで挙げてみます。
筋違い角とは
筋違い角は初手▲76歩△34歩の序盤で使える戦法で、いきなり▲22角成として、△同銀に▲45角(!)とすることで、34の歩と63の歩の両取りが受からず先手一歩得を確定できる戦法です。
一歩得なので先手良し!・・・と思いきや、角を使いにくい場所に手放しているということや、かなり手損しているというデメリットも持ち合わせています。
筋違い角のプロの評価
この筋違い角ですが、プロ棋士はまず指さないです。その理由は色々あると思うのですが、
・後手に角を持たれているため、後手からの変化が多い(先手も歩を持っているので、先手からの変化も多いです。つまり、すぐに定跡を外れて手将棋になります)
・角交換から角を打ち込んで歩を取るので、大きく手損している
・課題局面(後手優勢だと思われている局面)がいくつかある。また、正確に指せば後手良しだと考えられている。
・そもそも将棋は先手有利なので、先手でわざわざ冒険して手将棋にする必要はない
のような感じだと予想します。といっても、私はプロではないので実際のところは分からないですが(笑)そんなわけで、力戦というよりは奇襲戦法とみなされている気がします。実際、後手が何も考えずに飛車先だけ突いていたり、一直線に矢倉に組むと技がかかるので、奇襲の側面もあります。
筋違い角の特徴
その他、筋違い角の特徴としては、
・基本的に飛車を振るので、振り飛車党の戦法。後手の手得(△22銀)も振り飛車からみれば壁銀にできる。
・後手はほぼ振り飛車にできないので、振り飛車党が相手のときに有効
という点があります。
実際に私はけっこう指してみたのですが、あまり成績が良くなかったです。指しにくいというか、相手に角を持たれた状態での駒組みがやりにくいと感じました。角の打ち込みがあるという制限の中、いかに上手く駒組みをできるかがポイントだと思います。
大駒を持たれる変化
ところで、筋違い角を指している人は知っていると思いますが、この戦法は
馬を相手につくられる変化と飛車を持たれる変化があります。具体的には、前者は
▲7六歩 △3四歩 ▲2二角成 △同 銀 ▲4五角 △5二金右
▲3四角 △6五角 ▲5六角 △同 角 ▲同 歩 △5七角
▲5八飛 △2四角成
後者は
▲7六歩 △3四歩 ▲2二角成 △同 銀 ▲4五角 △5二金右
▲3四角 △3二金 ▲6六歩 △8四角 ▲6八飛 △9五角
です。前者は▲56角のところで▲56金右など無難に指すと先後同型(で後手側に!)になり、後者は▲66歩を指さないと△33銀から角を追われるため、ほぼ必然進行です。
これらの変化が良いか悪いかはさておきとして、後手からの多くの変化に対して互角以上で戦える必要があります。
まとめ
というわけで、まとめると、筋違い角は
・相振りの苦手な振り飛車党向き
・手将棋が強い人向き。特に大駒を持たれての駒組みの経験豊富な人向け
・相手より自分のほうが確実に多く研究できるので、研究派向き
の戦法です。
将棋倶楽部24の4段ぐらいの人でも指している方がいらっしゃる(筋違い角日記の方など)ので、持ち時間が短いネット対局では有力かもしれないな、と思ったりしています。