2009年3月11日水曜日

力戦振り飛車党のための、先手番戦法ガイド その3 筋違い角

今回から▲7六歩△3四歩の序盤作戦について考えてみます。

初回の今回は、筋違い角について考えてみます。「力戦振り飛車」というと普通筋違い角は入らないと思いますが、振り飛車党用で非定跡な戦法ということで挙げてみます。

筋違い角とは


筋違い角は初手▲76歩△34歩の序盤で使える戦法で、いきなり▲22角成として、△同銀に▲45角(!)とすることで、34の歩と63の歩の両取りが受からず先手一歩得を確定できる戦法です。



一歩得なので先手良し!・・・と思いきや、角を使いにくい場所に手放しているということや、かなり手損しているというデメリットも持ち合わせています。

筋違い角のプロの評価


この筋違い角ですが、プロ棋士はまず指さないです。その理由は色々あると思うのですが、
・後手に角を持たれているため、後手からの変化が多い(先手も歩を持っているので、先手からの変化も多いです。つまり、すぐに定跡を外れて手将棋になります)
・角交換から角を打ち込んで歩を取るので、大きく手損している
・課題局面(後手優勢だと思われている局面)がいくつかある。また、正確に指せば後手良しだと考えられている。
・そもそも将棋は先手有利なので、先手でわざわざ冒険して手将棋にする必要はない
のような感じだと予想します。といっても、私はプロではないので実際のところは分からないですが(笑)そんなわけで、力戦というよりは奇襲戦法とみなされている気がします。実際、後手が何も考えずに飛車先だけ突いていたり、一直線に矢倉に組むと技がかかるので、奇襲の側面もあります。


筋違い角の特徴


その他、筋違い角の特徴としては、
・基本的に飛車を振るので、振り飛車党の戦法。後手の手得(△22銀)も振り飛車からみれば壁銀にできる。
・後手はほぼ振り飛車にできないので、振り飛車党が相手のときに有効
という点があります。

実際に私はけっこう指してみたのですが、あまり成績が良くなかったです。指しにくいというか、相手に角を持たれた状態での駒組みがやりにくいと感じました。角の打ち込みがあるという制限の中、いかに上手く駒組みをできるかがポイントだと思います。

大駒を持たれる変化


ところで、筋違い角を指している人は知っていると思いますが、この戦法は
馬を相手につくられる変化と飛車を持たれる変化があります。具体的には、前者は
▲7六歩 △3四歩 ▲2二角成 △同 銀 ▲4五角 △5二金右
▲3四角 △6五角 ▲5六角 △同 角 ▲同 歩 △5七角
▲5八飛 △2四角成



後者は
▲7六歩 △3四歩 ▲2二角成 △同 銀 ▲4五角 △5二金右
▲3四角 △3二金 ▲6六歩 △8四角 ▲6八飛 △9五角


です。前者は▲56角のところで▲56金右など無難に指すと先後同型(で後手側に!)になり、後者は▲66歩を指さないと△33銀から角を追われるため、ほぼ必然進行です。

これらの変化が良いか悪いかはさておきとして、後手からの多くの変化に対して互角以上で戦える必要があります。


まとめ


というわけで、まとめると、筋違い角は

・相振りの苦手な振り飛車党向き
・手将棋が強い人向き。特に大駒を持たれての駒組みの経験豊富な人向け
・相手より自分のほうが確実に多く研究できるので、研究派向き
の戦法です。

将棋倶楽部24の4段ぐらいの人でも指している方がいらっしゃる(筋違い角日記の方など)ので、持ち時間が短いネット対局では有力かもしれないな、と思ったりしています。

2009年3月1日日曜日

力戦振り飛車党のための、先手番戦法ガイド その2(▲7六歩△8四歩の序盤)

▲7六歩に後手が△8四歩と突いてきた形を考えてみます。
この形は、後手が先に形を決めているので指しやすいと思います。

次に▲6八銀や▲6六歩と指せば相矢倉模様ですが、ここでは
・角道を止めない
・振り飛車にする
の2条件で別の手を考えて見ます。

早石田は無理


▲7六歩△8四歩に▲7五歩から早石田を目指すのは、
以下△8五歩に▲7七角を余儀なくされるので早石田にはできません



本筋


▲7六歩△8四歩には▲5六歩と突いて先手中飛車を目指すのがいいと思います。以下△8五飛なら▲7七角、△3四角には▲5五歩や▲5八飛、△5四歩には▲5八飛と進みます。

相手も△8四歩を突いているので、相振り飛車にはしにくいでしょう。



中飛車の参考書は色々ありますが、中飛車の定跡はどんどん進化していっているので、
新しいほうが良いと思います。
鈴木大介八段の最新著書は中飛車の本でもっとも新しく、
先手中飛車に詳しいのでオススメです。

3手目▲7七角


▲7六歩△8四歩に▲7七角という手もあります。



以下△3四歩▲8八飛と先手は角道を閉じずにダイレクトに向かい飛車にできます。
△3四歩▲8八飛のときに△7七角成▲同桂△4五角で困っているように見えますが、
▲6五桂△6二銀▲7七角で後手は香取りが受からず、先手有利です。ここらへんは4手目3三角戦法(鬼殺し向かい飛車)と同じです。



ちなみに、1筋の▲1六歩△1四歩の交換が入っていると▲7七角に△1三香と逃げる手があり、先手不利になるので注意です。

というわけで、3手目▲7七角から角道をあけたまま向かい飛車にして、飛車先逆襲を見せて牽制しつつ美濃や穴熊に組むといいと思います。駒組みの方法は、
後手盤4手目3三角戦法の本島ノートの鬼殺し向かい飛車の章を参考にするといいかもしれません。(居飛車が飛車先を突いた回数が一度か二度かの違いはありますが、目指すところは近いです)

参考:プロの実戦例 http://mo-maga.sakura.ne.jp/mukai/pro_m/nhk56_2k14.html


3手目▲6八飛


▲7六歩△8四歩に▲6八飛という手もあるかもしれません。私は指さないので分かりませんが(爆
ここから立石流から石田流を目指すか、角交換して向かい飛車に振り直す感じでしょうか・・

2009年2月28日土曜日

力戦振り飛車党のための、先手番戦法ガイド

自分の序盤を整理するため、また指し手を広げるために、
自分の指す戦法である、力戦振り飛車の序盤について書いてみます。

自分と同じような戦法を指す人の参考になればとても幸いです。

力戦振り飛車とは


主に角道を止めない振り飛車のことです。
対居飛車の持久戦になった場合、駒組みで負けないような指し回しを目標とします。
(よりはっきりと言ってしまうと、穴熊にされても戦える、または穴熊にされない振り飛車です)

序盤に突っ張った手を指すため、ほぼ互角の乱戦の筋も沢山あります。

なぜ先手番のみ?


ゴキゲン中飛車の序盤を見ると分かりますが、
最近の振り飛車は後手番のほうが指しやすいです。
なぜかというと、相手に先に形を決めてもらえるため、あわせやすいからです。

後手番の作戦は、
相手が居飛車ならゴキゲン中飛車か3手目3三角戦法、
相手が振り飛車なら相振りか居飛車でやればいいと思います。

というわけで、自分から形を決める先手番について話します。

初手について


振り飛車党の初手は▲7六歩か▲5六歩のいずれかだと思います。



▲7六歩はもっとも一般的な手で、まだ振り飛車かどうかすら確定していません。▲5六歩ははっきりと中飛車指向です。
他の手として端歩を突く手はあるかもしれませんが、今回は考えないことにします。

で、初手▲5六歩ですが、私はあまり指しません。初手▲5六歩で△8四歩と後手が居飛車ならよいのですが、△3四歩から相振り飛車にされる可能性があるからです。相振りの中飛車は少し指しにくい、というのが一般的な認識だと思います。(といっても、相振りに滅法強いタイプの人なら、▲5六歩から始めればいいでしょう。常に力戦中飛車にできます)
というわけで、初手は▲7六歩と指します!

次回は、2手目△8四歩の序盤について説明します。